このページでは、20代・30代・40代の年代別に出生前診断を受ける割合を過去のアンケート調査結果に基づき紹介しています。
また出生前診断を受けた妊婦さんはどんな理由で検査を決めたのかや出生前診断のメリット、デメリットなどもあわせてまとめていますので、これから出生前診断を考えている方はどうぞ参考にしてください。
出生前診断を受ける割合(20代・30代・40代別)
赤ちゃんの状態がわかる「出生前診断」を検討している、または検討したことのある方も少なくないと思います。
ここからは、20代、30代、40代と年代別に、出生前診断を受けた方がどれくらいの割合になるのか、データを元にご紹介していきたいと思います。
(参考データ:ベビカムリサーチより)
20代は約9%
出生前診断でわかる疾患の中では、ダウン症候群(21トリソミー)が最も有名ではないでしょうか。
ダウン症候群は、出産する年齢が高ければ高いほど、確率が上がってしまいます。出産適齢期である20代のうちなら、出生前診断を受けようと思う方が少ないのも頷けます。
もちろん、20代であるからと言ってダウン症候群の可能性がゼロであるわけではありません。
また、第二子以降を妊娠していて、上の子がなんらかの遺伝子疾患を持っている場合や、親類に遺伝子疾患を持つ方がいる場合は、20代でも出生前診断を希望するケースがあります。
30代は約8%
20代と30代では、受けた割合はほとんど変わりませんでした。
しかし、35歳以上を境に、出生前診断を受けるかどうか悩んだ方の割合が増えています。一般的に高齢出産と言われるのが35歳以上となることが、原因と考えられます。
34歳以下の方で、受けるか悩んだ方は3%~5%ですが、35歳~39歳では13%、40歳以上では55%にもなりました。
40代は約18%
今回ご紹介しているデータでは、40代の方の回答数が少ないのですが、それでも9人中2人は出生前診断を受けたという回答が得られています。
年齢的にも遺伝子疾患を生じる確率が高くなりますので、必然的に検査を受ける方の割合が増えるのは自然なことだと言えますね。
年代別の出生前診断を受ける割合の考察
一般的に35歳以上から高齢出産であると言われていますので、40代になると突出して出生前診断を受ける割合が高くなる傾向にありますね。
子どもが大きくなっていくにつれて、父母だけでなく、高齢になる自分たちの両親がどれだけ支援できるのか、など心配なことが多くなりますので、先に知っておきたいと思うのも自然なことだと思います。
経済的な面だけでなく、精神的・体力的な面でも、出産する年齢が高くなればそれだけ不安に感じることも増えてしまいます。ですから、40代で出生前診断を受ける割合が増加していくのも、頷けますね。
意外なのは、30代と比較して24歳以下の年代の方が、わずかながら割合が多いという点です。
ここまで年代別に見た出生前診断を受ける割合を考察してきましたが、参考データは2010年のものです。
出生前診断を受ける方は年々増加の傾向にありますので、現在ではもっと増えていると考えられます。
その理由については、次の項目でお話しさせていただきますね。
出生前診断を受ける妊婦さんは年々増加している
ここからは、出生前診断を受ける方が年々増加している理由について、お話ししていきたいと思います。
①高齢出産が増えている
現在、平均初婚年齢が上がり、それに伴い出産年齢も高くなっています。
1990年では、第一子の出産年齢が27歳なのに対し、2018年には30歳にまで上がっています。第二子、第三子の出産年齢も当然ながら、上がっていきますよね。
新型出生前診断でわかる疾患の一つである「ダウン症候群」も、出産年齢が高くなるにつれて、染色体の異常率が高まります(参照:週刊現代より)。
25歳の人が妊娠した場合、1,351人に1人という割合ですが、40歳の人が妊娠した場合は112人に1人という高い割合になるのです。
このことから、出産前に胎児に疾患があるならば、知っておきたいという方が増えているんですね。
近年、注目されている新型出生前診断(NIPT)は、妊婦さんから血液を採取するだけで検査を行うことが出来ます。流産や感染症のリスクもないので、受ける妊婦さんも増加しています。
②NIPTが年齢制限なく受けられる
2013年に日本で導入されてから、年々、検査を希望する方が増えています。
今までは、認定施設でしか検査を行うことが出来なかったNIPTですが、最近では無認可施設も増えています。
認可施設では35歳以上の妊婦さんが対象となる年齢制限がありましたが、無認可施設では年齢制限がありません。
そのため、今まで年齢が条件に合わず検査を受けられなかった方も、受けられるようになったことで、検査を受ける方の割合が増加しているのです。
また、認可施設では結果を聞く際など、パートナーと一緒に来院することを必須にしているケースも珍しくありません。
無認可施設は、メールで結果を教えてくれることもありますし、土日でも検査を行っているところもあります。
年齢だけでなく、どうしても平日は来院することが出来ないという方も、利用しやすいというメリットがあります。
出生前診断は受けるべき?受けないほうがいい?
新型出生前診断(NIPT)が国内で受けられるようになり、以前より検査が受けやすくはなりましたが、それでも受けるかどうか悩む方も多いと思います。
検査を希望した理由・希望しない理由について、ご紹介していきたいと思います。
受ける、希望する理由
高齢出産にあたる年齢だから
出生前診断を希望する方や、実際に受けた方で、最も多い理由は妊婦さん自身の年齢でした。
高齢出産になる35歳以上だから、出生前診断を受けて、胎児の状態を知りたいと思うのは自然なことですよね。
出生前診断でわかるダウン症候群は、高齢出産になればなるほど確率が高くなる疾患です。
万が一、陽性だった場合、どうするか考える時間や準備も必要となりますよね。そのためにも、あらかじめ知っておきたいと考える方が、出生前診断を希望しているようです。
不安を抱えたまま妊娠生活を送りたくない
お腹の中に赤ちゃんがきたとき、嬉しい気持ちでいっぱいになる反面、元気な子を産めるだろうか、と不安になる方も少なくありません。
生まれるまでの期間「どんな子が生まれるんだろう?」「病気や障害はない?」と、不安な気持ちのまま過ごしたくないという方も、出生前診断を希望しているようです。
確かに、妊娠中ずっと不安を感じていてはストレスになってしまいますよね。それはお腹の赤ちゃんにとっても、妊婦さんにとっても悪影響を与えてしまいます。
先の分からない不安にストレスを感じてしまうのなら、出生前診断でどのような状態かを知っておきたいと考えるのでしょう。
医師から勧められた
第二子、第三子を妊娠している方だと、上のお子さんに疾患があるかどうかで、医師に出生前診断を勧められることもあるようです。
他にも、妊婦さんの年齢によっては出生前診断という検査があると話してもらえるケースもあります。
自分では受けるつもりがなかったけれど、エコーなどで疑わしかったり、医師からの提案で受けることになったという方も珍しくありません。
受けない理由
子どもは授かりもの
生まれてくる子どもは、どんな子でも授かりものだからという理由で出生前診断を受けない方もいらっしゃいます。
命を授かることは「奇跡」であり、その命を大切に産み育てていきたいという考え方もありました。
また、障害児だからと言って「産まない」という選択ができないと思ったから、出生前診断を希望しなかったという意見もありました。
妊娠生活という幸せな時期に悩みを抱えたくない
上記で出生前診断を希望する理由の一つとして、ストレスを抱えたまま妊娠生活を送りたくないから出生前診断を受けたという意見がありました。
こちらは反対に、妊娠生活を幸せに過ごしたいからこそ、診断を知りたくないという意見です。
万が一、陽性だった場合、産むのか産まないのか、受け入れられる環境なのか、経済的に問題はないのか、周囲のサポートがあるのかなど、考えなければいけないことは山ほど出てきてしまいます。
そんな悩みを抱えたまま、妊娠生活を送りたくないという方は、出生前診断を希望しないようですね。
出生前診断のメリット、デメリット
メリット
赤ちゃんの状態がわかり安心
妊娠中の女性は、通常よりも精神的に不安定になりがちです。マタニティブルーや妊娠中に鬱状態になってしまう方も、決して珍しくはありません。
妊娠中に考えることは、「生まれてくる子が健康か」「きちんとお世話ができるのか」「生まれたあと職場復帰できるのか」など、多岐にわたります。
他にも「赤ちゃんがちゃんと育っているのか」「陣痛に耐える自信がない」「ちゃんとしたママになれるか心配」という、悩みもあります。
特に、お腹の赤ちゃんがすくすくと育っているのかということは、妊婦さんたちにとって大きな心配事の一つだと言えますよね。
そのため、出生前診断を受けることで、陰性であるという結果が知れれば、妊婦さんたちも安心することが出来ます。
事前に準備する時間を作れる
陰性という結果を聞いて安心できるということも、出生前診断のメリットですが、それだけではありません。
陽性であった場合でも、疾患を持つ子どもを受け入れる準備をする時間を作ることが出来ます。中には、中絶という決断をする方もいらっしゃると思います。
しかし、1日や2日で決められることではありませんよね。パートナーやご自身の両親に相談し、納得のいく結論を出さなければいけません。
このように、事前に準備をする時間が作れることが出生前診断のメリットであると言えます。
生まれてくる子を迎え入れる場合でも、今通っている病院で対応してもらえないときは、別の病院を探す必要もあります。
病院の設備に不安があれば、より最先端の医療が受けられる病院へ転院したいと思う方も多いでしょう。
どのような準備をすれば良いのかわからず、手探りの状態になってしまう方も珍しくありません。
出生前診断で結果を知ることで、考える時間や行動する時間を作ることが出来るのは、大きなメリットですよね。
デメリット
出生前診断を受けることで得られるメリットはもちろんありますが、人によってはデメリットになることもあります。
結果を知り、混乱する
出生前診断のメリットの一つとして、結果を知ることで「準備をする時間を作ることが出来る」と、お話ししました。
しかし、妊婦さんによっては陽性という結果を知り、混乱してしまうケースも少なくありません。
精神的なサポートもしてくれる遺伝カウンセリングが十分でなければ、陽性という結果を妊婦さん一人で抱え込んでしまうことも多いのです。
羊水検査は検査実施時期も遅いため、産むか産まないかという結論を数週間で出さなければいけないのです。
さらに、羊水検査が実施可能になるころには、お腹の赤ちゃんの胎動が始まるころでもあります。
自分のお腹で必死に生きようとしている赤ちゃんを実感することで、さらに決断しにくくなり、精神的に大きな負担を背負ってしまいます。
出生前診断を受ける前に、
・どのような疾患がわかるのか
・万が一、陽性だった場合、どんな準備をすればいいのか
などを、十分に理解しておく必要があります。
また、パートナーとも、陽性だったときにどんな決断をするのか、あらかじめ決めておくことも大切です。
出生前診断だけだとわからない疾患がある
出生前診断を行っても、全ての疾患がわかるわけではありません。主に13,18,21トリソミーの3つで、これは先天性染色体異常のうち1/4です。
他にも、発達障害などの障害は検査で知り得ることが出来ないものです。
出産後にわかる疾患も数多くありますので、出生前診断で「陰性」だったとしても、他の疾患が判明する可能性もゼロではありません。
出生前診断を受けるか受けないかは夫婦が決める
ここまでデータを参考にしながら、
・出生前診断を受ける方の割合・考察
・年々、出生前診断を受ける方の割合が増加している理由
・出生前診断を希望した・しなかったのはなぜか
・検査のメリットとデメリットについて
などをお話ししてきました。
出生前診断は、倫理的な側面もあり検査を受けることに賛否両論あります。生まれる前から「命の選別」をするなんて、と考える方も、中にはいることでしょう。
しかし、生まれた赤ちゃんを育てるのは、周囲の人たちではなく、お腹の中で育み、壮絶な出産を乗り越えるお母さんと、それを支えるパートナーの男性です。
出生前診断を受けることを批判することは、簡単です。ですが、障害を持った子を育てていくことは、とても難しいことですよね。
経済的にも、精神的にも不安なことも多くあることでしょう。だからこそ、どのような結論を出すにしても、しっかりと考えていく必要があるのです。
出生前診断については、周囲の意見で決めることがあってはいけません。ご自身とパートナーの二人で、話し合い、納得した上で結論を出してくださいね。